NSR250R:ABOUT

跨ったときの、身体にしっくりと馴染む感触にまず、好感を抱いた。第一印象が全体のイメージを左右するとは限らないが、何せマシンは'90年のNSR250R。いやが上にも期待は高まる。充分に暖機を行った後、走り出す。ストレート、コーナー、共に感じとれる軽快感、しっかり感。さらにしなやかさ。そこにはレースマシンの持つ「ダイレクト性」をベースに、乗っていて安心感につながる幅広い許容性を加えた確かなテクノロジーの存在を感じとれる。つまり路面状況がそのままストレートにライダーに伝わってくる過程をレーシングマシン独特のものとするなら、NSRはまず路面状況を分析し、明確に整理した情報としてライダーに伝えてくれる。このワンクッション(むろん、時間にしてコンマ何秒の話だが)が、いついかなる時でもライダーに大きな安心感をもたらしてくれるのだ。とにかくタイヤを通して伝わってくる情報量の豊かさ、とりわけリアまわりの情報のつかみやすさは特筆に値するだろう。タイヤがしっかりと路面をつかんでいる感触、それが否応なく認識できる。走り出してライダーがまず考えることは、どこまでいったら滑るのか、滑らないのかということだから、その限界をはっきりとしたかたちで提示してくれる能力の高さはやはり、NSRならではのものだろう。フロントを忘れさせてくれる、といったら大袈裟かもしれないが、スポーツマシン本来のリアステア、リア主体のコントロールの楽しさを充分に堪能できるはずだ。




興味深かったのは、やはりパワーユニット。すでに熟成の域にあるVツインだが、すべてにわたってより洗練度を増したと言うべきだろう。特に昨年来からのNSRの主張でもある「台形パワー」の存在がより確かに感じられるものとなっており、パワー特性が明確なものになった。上の回転域が実用的に使え、何よりも低速→中速→高速のつながりがわかりやすい。つまり走っていて常にパワーカーブを想定できるのだから、これほど心強いものはない。パワーとはピークだけでは語れない、という主張が実感として体験できる。パワーのバランスが実にうまく図られているのだろう。またバランスということで言えば、全体のバランスが実にしっくりとした調和を見せているのが、'90年NSRの最も大きな特徴だ。エンジン、フレーム、サスペンション…。ブレーキの効きひとつとってみても、より確かなものに感じられるのも総合バランスの高さゆえ、と言えるのではないだろうか。とにかくすべての要素が「走り」のためにまとまった、そんな感じだ。だからこそ走り込むほどに楽しくなっていく。感性のままに走れる。自分自身がマシンをしっかりとコントロールしているのだという意識を常に持つことができるから、乗っていて楽しい、また面白いのだと思う。走っていると、いろいろなことが試せそうな気がしてくる。それだけ、ライダーの「感性」に最も近い2ストロークマシンなのだが、ただ、このマシンに乗るライダーにはアタマではなく、カラダで乗って欲しい、と思う。マシンの挙動に気をとられすぎないことが、大切だ。マシンから意識を離す、つまりマシンとライダーがストレートに対話できることが、走りに専念するということだからだ。幸い、NSRはマシンとカラダで直接、情報の交換ができるし、また、感性レベルの違いによってそれぞれ異なった感動を用意してもくれる。願わくば、より多くのライダーが、より高いレベルの感動を味わってくれたらと思うのだが。





equipments

(1) Vツインパワーユニットのさらなる熟成・発展はもちろん、しなやかな剛性感を追求した新設計フレーム。またディメンションの検討などにより、高い総合バランス性能を獲得した。
(2) 精悍なフロントビューを彩る、新開発の超薄型・異型デュアルヘッドライト。
(3) ワークスマシン譲りのレーシーな雰囲気を漂わせるリアビュー。理想的なチャンバーレイアウトが可能にした、段違いサイレンサーと、さらに被視認性が向上した大型ウインカーを装備。
(4) ストリートからサーキットまで。自由度の高いライディング・ポジションを可能にする、新デザインのシート。シート高は走行安定性や足付き性の向上を図った結果、770mmと低く設定し、ピリオンシート下部には6.8リットルの大型収納スペースを設置しいる。
(5) バックミラーマウント後方部分を透明化し、視認性をアップしたウインドスクリーン。またジュラルミン鍛造製クリップオンハンドルは、スロットルグリップトルクを1kgcm低減し、微妙なタッチのスロットルワークを可能にした。
(6) ラジエーターを通過した空気を効率的に排出するため、カウル面に設けた大型アウトレット。
(7) 大型タコメーターを中心に整然とレイアウトされたメーター回り。フィラーキャップは使いやすいエアプレーンタイプを踏襲し、フューエルコックは、より操作性の向上したボールクリックタイプに変更。
(8) Vツインとしては最も理想的なレイアウトをとる、楕円状オーバルチャンバー。

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(9) 路面追従性を向上するため新たに採用した、作動応答性に優れたカートリッジ式フロントフォークと、絶大なストッピングパワーを発揮する、φ276mmフローティング式ダブルディスクブレーキ(前)を装着。
(10) 冷却効率の大幅アップを図るため採用した、ラウンド型ラジエター。
(11) レーシングテクノロジーをフィードバックした、新型サイレンサー&パイプステー。荷かけフック兼用の2段収納式ピリオンステップ装備。
(12) より軽快で安定したコーナーリングを求めた結果、新しく採用した17インチリアタイヤ。
(13) 高剛性を誇る、新設計リアフォークの「ガルアーム」を装備。




mecha-note


【エアロフォルムデザイン】
250ccロードレーサーNSR250のもつ軽快さ、機能美、迫力などをダイレクトに継承し、空力に優れたダイナミックなボディデザイン。流麗なフォルムはライダーと一体化することにより、さらに強調される。

【NSシリンダー】
フリクションロスを軽減するためコーティングを施した高性能シリンダー。軽量かつ放熱性に優れる。

【オーバルチャンバー/段違いサイレンサー】
排気効率をさらにアップするために新しく採用されたもので、ワークスマシンNSR250と同じレイアウトのチャンバー。定評あるオーバル(楕円)チャンバーの応用技術をはじめ、新開発・ガルアームの存在があればこそ採用することができた、V型2気筒としては理想的なレイアウトのチャンバーである。また左右非対称のレーシーな構成をとる段違いサイレンサーは、その迫力あるスタイリングと共に、内部構造を新たに設計することにより、排気騒音も低減している。

【高剛性ガルアーム】
より高い排気効率を求めたチャンバーレイアウトの結果、フレーム下部にスペースを稼ぐ目的と共に、しなやかで確かな剛性確保の両立を求めて生み出されたニュータイプのスイングアーム。右側面は大きく「への字型」に屈曲し、左側面はトラス構造となっている。ワークスレーサーNSR250直系のレイアウトである。

【新クロスミッション】
タウン走行のみならず、サーキット走行においてもライダーの意志にダイレクトに反応するリニアリティを追求し、加速を重視して設定されたミッションレシオのこと。また、より軽快なチェンジフィーリングと的確なシフトワークを実現するために、チェンジ機構を従来のボールプランジャータイプからクロウタイプに全面変更している。

【新設計アルミツインチューブフレーム】
高剛性としなやかさをあわせ持ったフレームの呼称。真に限界性能を高め、走行フィーリングを向上していくためには、フレームをはじめ、フロントフォーク、リアフォークなどの剛性と、フレームの縦、横、捩じれの剛性を高度にバランスさせることが不可欠となってくる。こうした新しい設計思想に基づいて開発されたのが、このフレームである。アルミパイプの断面形状を上下方向に伸ばし、ピボットプレートの肉厚を変更することなどにより、横Gや路面のギャップをフレーム全体でしっかりと、しかもしなやかに受け止めることが可能となった。

【台形パワーの進化】
各ギアポジションの追加により、特に1〜4速における加速の伸び切りを大幅に向上。8,500rpm〜11,750rpm、すなわち約3,250回転にもわたる幅広い回転域でマキシマムパワーを発揮することのできる、よりフラットなパワーカーブを描くエンジン特性を実現している。一段とコントローラブルになったばかりか、そのどこまでも伸びを感じさせる加速感はまさにワークスマシンをイメージさせるものとなっている。これこそが、マキシマムパワーを「点」ではなく「線」として捉えるNSR独自の理念を具体化した、台形パワーの著しい進化である。

【ディメンション】
人車一体感をより向上させるための先進的思想。ヘッドパイプポイントをエンジンの前後・上下方向に近付けてフロント分担荷重を増すとともに、ショートホイールベース化することにより旋回性能を向上、また、上下方向に近付けることにより直進安定性、スタビリティを一層高めることに成功している。

【PGM・III】
従来のエンジンコントロールシステム、PGM・IIをさらに知能化させたもの。ギアポジションセンサーの採用により、各ギアポジションにおいて独立したマップコントロールをもち、1〜6速それぞれにエンジン回転数、スロットル開度に応じて点火、RCバルブ、キャブを適切にコントロールする画期的システムである。

【V2エンジン】
NSRの心臓部。最新のレーシングテクノロジーを投入し、圧縮比アップ(7.3→7.4)、ウォータージャケットの容量アップなどによる冷却性能の向上、掃気・排気ポートタイミングの変更などによるピックアップの向上などを図った。また、クランクシャフトの新設計に代表されるように、各パーツを新たに設計、ほぼニューエンジンとも呼べる熟成をすすめた。




走りきわめて、ハイパフォーマンス。
'90 NSR250R SP

よりステディに。高次元の走りを支える、魅力の特別装備。
ベースマシン、NSR250Rの豊かな素性はそのままに、SPではレーシングユースにも対応した魅力ある数々のアイテムを標準装備している。まず、乾式クラッチ。素早いシフトアップ/ダウンにも、瞬時に反応する切れ味の鋭さが大きな特徴だ。さらにマグネシウムホイール。バネ下重量の軽減に大きく寄与している。またフロントサスペンションにはカートリッジ・タイプの減衰力可変機構を採用し、リアにもリザーバータンク別体式・減衰力可変機構付クッションを採用。さまざまな走行条件に応じたサス・セッティングが可能だ。

■乾式クラッチ
切れ性能、スタート時のフィーリング、エンジンフリクション低下など、数々のメリットを持つ乾式クラッチを標準装備。
■マグネシウムホイール
バネ下重量軽減を図る、フロント17×MT3.00、リア17×MT4.50サイズのマグネシウムホイールを装着。
■減衰力可変機構付フロントサスペンション
カートリッジ・タイプのバルブを採用した、減衰力可変機構・プリロード調整付フロントサスペンションを装着。
■減衰力可変機構付リアクッション
リザーバータンク別体式、TENSION/COMPRESSION減衰力可変機構付リアクッションを標準装備。


本田技研工業発行のカタログより抜粋。

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